朝、玄関で靴を履こうとしない我が子。「お腹が痛い」「行きたくない」とうずくまる姿を見て、胸がぎゅっと締めつけられた経験はありませんか。
「甘えているだけなのでは」「ここで休ませたら、もう二度と行けなくなるのでは」。そんな考えが頭の中をぐるぐる回り、仕事の時間は迫り、つい強い口調で「いいから行きなさい!」と言ってしまう。そして、子どもの背中を見送ったあとで自己嫌悪に陥る。私が小学校の教員だった頃、保護者面談で何度もそんな声を聞きました。
お子さんの前では平気な顔をしていても、夜に一人でスマホを開き、「不登校 原因」「学校に行かない 将来」と検索してしまう。その不安は、あなたが子どもを大切に思っている証拠です。
この記事では、元教員として1000人以上の子どもたちと関わってきた経験から、「学校に行きたくない」と言われたときに親が最初にやるべきことを、できるだけ具体的にお伝えします。読み終えたとき、少しでも肩の力が抜けていたら嬉しいです。
③問題の本質
多くの親御さんは「どうすれば学校に行かせられるか」を考えます。けれど、本当の問題はそこではありません。
子どもが「行きたくない」と口にするのは、わがままではなく、心と体がすでに限界に近づいているサインであることが多いのです。大人でいえば、毎朝「会社に行きたくない」と思いながら出勤し続けている状態に近いかもしれません。
つまり本質は「登校できるかどうか」ではなく、「子どもが安心できる場所と、本音を話せる相手があるかどうか」です。登校はその結果としてついてくるもので、順番を逆にすると、かえって子どもは心を閉ざしてしまいます。
④原因(3つ)
原因1:学校での人間関係の小さな傷つき
友達とのささいなやりとり、先生の何気ない一言、グループからの疎外感。大人から見れば小さな出来事でも、子どもには深く刺さることがあります。教室では目立たない子ほど、我慢を重ねて限界を迎えるケースを何度も見てきました。本人が理由をうまく言葉にできないことも多く、「理由を言いなさい」と迫るほど、口が重くなります。
原因2:頑張りすぎによるエネルギー切れ
真面目で責任感の強い子は、宿題、習い事、友達づきあいと、周囲の期待に応え続けています。ある日突然、糸が切れたように動けなくなるのは、怠けではなくエネルギーの枯渇です。「あんなに頑張っていたのに」と親が驚くタイプほど、実は長い間無理をしていた可能性があります。
原因3:家庭が「安心して弱音を吐ける場所」になっていない
本当は家で泣きたい、愚痴を言いたいのに、親ががっかりする顔が浮かんで言えない。子どもは親の表情を驚くほどよく見ています。「ちゃんとしなきゃ」という空気が家庭にあると、学校でのしんどさを抱えたまま、家でも気が休まりません。親が悪いという話ではなく、親の不安が子どもに伝わりやすいという構造の話です。
⑤解決方法
最初に目指すのは「登校」ではなく、「家庭を回復の基地にすること」です。
まず、子どもの「行きたくない」を否定せずに受け止めます。そのうえで、原因探しや説得をいったん手放し、しっかり休ませる。この順番が大切です。エネルギーが満タンに近づけば、子どもは自分から次の一歩を考え始めます。
もう一つは、親が一人で抱え込まないことです。担任やスクールカウンセラー、教育支援センター(適応指導教室)、フリースクールなど、頼れる場所は思っているより多くあります。出席の扱いや学びの継続についても、今は選択肢が広がっています。「学校に戻るか、戻らないか」の二択で考えず、「この子が安心して育つ道はどれか」という視点で、ゆっくり探していきましょう。
⑥具体アクション
アクション1:まず「話してくれてありがとう」と伝える
「行きたくない」と打ち明けるのは、子どもにとって勇気のいることです。「どうして?」と聞く前に、「話してくれてありがとう。しんどかったね」と一言返してみてください。理由は無理に聞き出さなくて大丈夫です。安心できたとき、子どもは自分のタイミングで話し始めます。
アクション2:1〜2週間は「回復期間」と決めて休ませる
期限つきで休むと決めると、親も子も気持ちが楽になります。この間は、勉強の遅れの心配は横に置き、睡眠・食事・好きなことの時間を優先しましょう。ゲームや動画も、最初のうちは「心を休める手段」として大目に見る余裕があると、回復が早まります。
アクション3:担任の先生に事実だけを共有し、相談先を一つ増やす
担任には「最近、朝にお腹が痛いと言って行き渋っています」と、見たままの事実を伝えます。あわせて、スクールカウンセラーや自治体の教育相談窓口など、学校以外の相談先も一つ調べておきましょう。話せる大人が増えるだけで、親の心の余裕がまるで違ってきます。
アクション4:親自身の休息と息抜きの時間をつくる
意外と見落とされがちですが、親が笑顔でいられることは、子どもにとって最大の安心材料です。15分でも、好きな飲み物を飲む時間を確保してください。
⑦まとめ
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、いちばん大切なのは、登校させることではなく、安心して休める土台をつくることです。原因は、人間関係の傷つき、頑張りすぎ、そして家庭で弱音を吐けない空気など、いくつかが重なっていることが多く、本人にも説明しきれません。
だからこそ、まずは受け止める。休ませる。そして、親が一人で抱え込まず、頼れる相手を増やす。この3つから始めてみてください。道のりは人それぞれですが、子どもは必ず、自分のペースで歩き出します。
不安な夜は、どうかご自身を責めないでください。ここまで悩んで向き合っているあなたは、もう十分に「いい親」です。
📚 この記事に関連するおすすめの本

親ができることを具体的に知りたい方へ
不登校の9割は親が解決できる 3週間で再登校に導く5つのルール
著:小川涼太郎/監修:小野昌彦 楽天★★★★☆(15件)/ 1,870円
不登校の子への関わり方を、親が家庭で実践できる5つのルールにまとめた一冊。何から始めればいいか分からない、という最初の一歩に役立ちます。

子どもの気持ちを理解したい方へ
著:桑島隆二 楽天★★★★★(1件)/ 1,793円
不登校の背景にある子どもの心の動きを丁寧に読み解く一冊。「なぜうちの子が」という疑問に、新しい視点を与えてくれます。

長い目で見通しを持ちたい方へ
著:齊藤万比古 楽天★★★★☆(3件)/ 1,650円
不登校の始まりから回復までの道のりを、児童精神科医の視点で整理。先の見えない不安を和らげ、見通しを持つ助けになります。
この記事を書いた人:トラせん(元小学校教員・旅ブロガー)
教育現場で1000人以上の子どもたちと関わった経験をもとに、子育て・教育・キャリアについて発信しています。


コメント